読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

アジアのゴジラ

ディープラーニング・テクノロジー企業『アジラ』からのお知らせ

日本のIT人材は『質的に?』30万人の不足に陥る

IT業界の課題

先日、ガートナージャパンの調査で、日本のIT人材は四年後に質的に30万人の不足に陥るという記事を読みました。彼らの展望は以下のとおりです。

  1. 2020年末までに、日本のIT人材 (注) は質的に30万人以上の不足に陥る
  2. 2020年までに、日本のIT部門の10%が、IT組織の「一員」としてロボットやスマート・マシンを採用する
  3. 2020年までに、オフショアリングを実施する日本のIT部門の50%が、コスト削減ではなく人材確保を目的とする
  4. 2020年までに、非IT部門が単独で進めるITプロジェクト (開発・運用・保守) の80%以上が、結局はIT部門の支援・助力を求めざるを得なくなる

ガートナー | プレス・リリース |ガートナー、2017年以降のIT人材に関する展望を発表

 

対策としては、①優秀な人材を確保する。②運用等にロボットやスマート・マシンを活用する。③オフショアリングの三つが挙げられています。 

私はこの三つにくわえ、④業界構造の変革、⑤IT技術者の起業、という2つも追加したいと思います。ポイントは「質的に」30万人が不足というところにあります。

「質的に」とはどういうことなんでしょう。

業界構造の変革

知識集約型産業とは

労働の質、いわゆる生産性を考える際に必ず考えるべきことは、その産業が知識集約型か、労働集約型かということです。

知識集約型産業とはつまり、「一騎当千」があり得る産業のことです。三国志でいうところの関羽や張飛、趙雲、呂布や夏侯惇といった「たった一人でも1000人分の働き」をすることができる産業のことです。

ITの仕事というのはこれが通用する業界であり、優秀なメンバー数名で数億円の価値を生み出せる業界と言われています。シスコシステムズのCEO、ジョン・チェンバースはそれを次のようにそれを表現しました。

「世界的なエンジニアとその仲間五人で、平均的なエンジニア二百人分を上回る生産力がある」

一騎当千とまでいかなくても、もしあなたの部下に1人の優秀な部下がいれば、これまで10日間かかっていた仕事を、3時間に短縮してさらにバッチ処理で自動的に毎週流してくれるかもしれません。

よく対比されるのは建設・土木業界で、こちらは優秀なメンバーが数人がいたとして、橋もトンネルも作れません。必要な労働力を積み上げて成果を挙げる「労働集約型産業」と呼ばれています。

日本のIT業界のモデルは何故かゼネコン同様の労働集約型のモデルで構築されており、ここで不足されているとされている30万人は労働集約型の人材と考えられます。これがいわゆるひとつの「人月工数」で計上するモデルです。

一騎当千が生まれない理由

なぜ一騎当千が生まれないのでしょう?それはビジネスモデルにあります。以下の図をご覧ください。

f:id:asilla:20170128175503p:plain

日本の約75%のIT技術者は右上ITサービス企業に所属しており、日本の多くのプロジェクトは上段のフローで推進されています。ITコストを下げたいユーザー企業と、プロジェクトの人的リソースを増やして工数を増やしたいITサービス企業の間に利益相反が起きているのがわかります。

ポイントはここです。

さあここで質問です。

ITサービス企業のIT技術者は、新たな技術やアイデアを駆使して人月工数を減らすような提案をすると思いますか?

難しいと思います。

「この技術をうまく使えば、いま現場に5人常駐しているIT技術者を1人にできます!」なんて意気揚々と提案しようものなら、営業が飛んできて引っ叩かれて「バカかお前はっ!!」と唾を撒き散らして言うでしょう。人月工数を減らしては会社の売上が落ちてしまうので、そういった提案は事実上難しいと想定されます。

その他以下のようなデメリットが考えられます。どれも生産性を著しく阻害するものです。

  • システム開発のモデルがウォーターフローになりがち
  • マルチベンダーの場合は互いに足を引っ張り合ったりする
  • ベンダーロックインによる無用なコストの発生

IT技術者の質を高めるモデル

一方、下段のモデルは企業としての「ユーザーに低価格でサービスやプロダクト提供したい」というビジョンがあれば、企画&開発は協力してそれを達成しようとするでしょう。特にIT技術者は、新しい技術やアイデアを駆使して問題を解決しようとするはずです。なぜなら、それが評価に繋がるからです。これぞまさに知識集約型産業としての力を十分発揮できるモデルと言えるでしょう。また、企画と開発が対等な関係にあれば、アジャイル開発といった思想を社内に取り入れることも可能だと思います。

ちなみに米国のIT技術者の70%は「ユーザー企業」に所属しています。つまり、下段のフローなんですね。

出典:IT人材育成事業:IT人材白書:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

結論としては、上段モデルから下段モデルへ移行していくことで一人あたりの生産性を飛躍的に向上させることができるはずです。ユーザー企業さんは積極的にIT技術者を採用して内製化及びIT技術者の企画力、マーケティング力を向上させていくことが、企業の競争力を高めることになると思います。

また、それとともに業務の選定をしっかり行って自社内で行うとコストが高くついてしまう業務については海外オフショア開発、BPOを活用するのが最良の対策だと思われます。

この方法で、どれくらい生産性が向上するのか定量化してみたいものです。

さて、次週はもうひとつの提案である「IT技術者の起業」について書きたいと思います。

以下、ご参考。